この世界で、身体のことをもっとも考えている人はプロのアスリートでしょう。なぜなら、彼らは身体を鍛えることや身体のケアをすることが収入に直結するからです。
身体のケアを怠って怪我をすれば評価に響き、収入が減ってしまうかもしれません。もしも致命的な故障をして選手生命が絶たれたら、収入も断たれます。
板前が包丁を丹念に研ぎ、メンテナンスを怠らないのと同じように、アスリートは自分の身体を適切にトレーニングし、入念なケアを怠りません。
プロアスリートの身体に対する姿勢や態度、トレーニング法やケア方法は彼らのもっとも貴重な資産であり、そこから学べることはたくさんあるはずです。
プロのトレーニングサイクル
サッカー選手たちは、試合のシーズンが終わると次のシーズンのためにトレーニングの準備を始めます。野球選手は、春のトレーニングが終了すると試合用の完全なトレーニングモードに入ります。バスケットボール選手は夏のあいだに身体を休め、回復させます。
どのスポーツ選手にも共通しているのは、トレーニングと休息のサイクルをきちんと計画していることです。
たいていは「準備(プレシーズン)」→「試合・メンテナンス(シーズン中)」→「休息・回復(シーズン後)」のサイクルになっている傾向があります。
しかし、ダイエットや肉体改造、健康維持のために運動をする人にはこのようなシーズン(季節)ごとのサイクルはありません。実際、ダイエットや肉体改造のためのトレーニングには、たゆまぬ努力以外の計画はありません。
もしかしたらあなたは「一年中一生懸命がんばらないといけないの?」と思うかもしれません。実際、「良い結果を得るためにはハードなトレーニングを絶え間なく行わなければならない」と信じている人もいます。
しかし、これは真実ではありません。これは多くの人をトレーニングや運動全般から遠ざけるだけです。
たしかに、より高いフィットネスレベルを目指すならハードなトレーニングは必要です。しかし、毎日ハードなトレーニングをやり続けなければいけないということではありません。
ハードなトレーニングを行うなら、負荷の軽い、楽にできる運動も組み合わせる必要があります。ハードなトレーニングをすることが常に良いことではありません。
あなたがアスリートである場合や「ボディビルやフィジークの大会で優勝したい」という特殊なニーズを持っている場合を除き、重要なのは「身体を大切にしながら運動を楽しむこと」だと僕は思っています。
運動による苦しさや痛みのことを考えるよりも、運動を楽しみ、次のトレーニングにわくわくするほうが建設的です。
楽に休息を取りながらハードなトレーニングをバランスよくこなせれば、最適なレベルでの身体改善ができます。
運動をやり過ぎるのは運動をやらないのと同じぐらい、身体にとって悪い影響をおよぼします。
ダイエットや肉体改造、健康維持のためのトレーニングはレースでも競技でもありません。リラックスして身体を変える過程を楽しんでください。
プロのようにトレーニングする方法
準備とストレッチを軽視しない
ストレッチは、身体の自由に動く能力を最大限に高めます。
固い組織は関節の動きを制限し、重要な腱が効果的に動作するのを妨げる可能性があるため、トレーニングの前後にストレッチをすることは怪我を防ぐために不可欠です。
「時間がない」とか「めんどくさい」と言って、ストレッチを除外しないでください。
ヨガやピラティスは、筋肉を伸ばし、強化します。このトレーニングはインパクト(衝撃)のない運動なので、ハードトレーニングと組み合わせるのに最適です。
プロのサッカー選手のなかにも、こういったインパクト(衝撃)の低い運動を好む選手がいます。
複数種類の運動を混ぜる
アスリートは、特定のプレーを実行するために特定のトレーニングを実行します。
この方法は、僕たちがトレーニングの方法を間違えて過度の怪我や身体の不均衡を抱えることを防ぐのに役立ちます。
運動する方法は、ランニング、バイク(自転車)、水泳、ダンス、ジャンプ、ボクシング、ウエイトトレーニングなど、たくさんあります。
ひとつのスタイルに制限しないでください。トレーニングの種類を数週間に一度調整することで、退屈や飽きることを避けられます。
ハードトレーニングを毎日やらない
プライオメトリクス(おもにジャンプ系のエクササイズで、筋肉の急激な伸張を繰り返すことにより筋収縮速度を高め、瞬発力を鍛えるトレーニング)のような高インパクト(衝撃)のトレーニングは、強度とパワーを増強するのに最適で、とても楽しいものです。
しかし、あまりにも頻繁にやり過ぎると重要な関節を痛める可能性があります。
ハードなトレーニングは連続して行わないでください。身体がダイナミックな動きをする準備ができているときにだけ行ってください。
ジャンプやインパクトのある運動は週に一~二日やれば十分です。
休息日を設ける
トレーニングに適応し、回復する時間を身体に与えるために、少なくとも週に一~二日は休むようにスケジュールを立ててください。
あなたの活動レベルが軽い場合は、休息日を設ける必要はありません。しかし、もしあなたが週に四日以上のハードなトレーニングをしている場合は、休息日は不可欠です。
反復・進歩・一貫性のパワーを使う
僕たちの身体は、これら三つの重要なトレーニング要因によく反応します。
- 反復:トレーニングの動きをマスターしたり向上させたりしたい場合は、繰り返し練習する必要があります
- 進歩:トレーニングに慣れて楽にこなせるようになったら、より上のレベルを目指しましょう
- 一貫性:運動の習慣は一貫性を保ったほうが楽です
「やる気があるときは運動するけどめんどくさいときはやらない」というように気分で行動を決めていると、運動を習慣化するのは難しいです。
「毎朝かならず30分このトレーニングをする」と決めて欠かさずやるほうが、気持ち的にも楽です。
楽しむこと
運動を楽しんでください。
良いサイクルには「準備運動(軽度の運動)」「中強度の運動」「高強度のトレーニング」「休息」「反復」が含まれます。
六~八週間に一度トレーニングの内容を変えると、新鮮でわくわくする気分になれます。
そしてもちろん、アスリートのように身体に適切な燃料(=栄養)を供給することを忘れないでください。