ほとんどの病気の真の原因は水不足にある by バトマンゲリジ博士
母国イランでの救援活動から
イラン人医師、バトマンゲリジ博士は1931年にイランのテヘランで生まれました。
とても優秀だったので、英国に派遣されロンドン大学の聖マリア病院医学校で訓練を受けて医師の資格を取得。
その後、母国に戻り、助けを必要とする人々のために医学センターや診療所を設立するべく奔走するが、ちょうどこの頃「イラン革命」が勃発。
博士は運命の嵐に呑み込まれました。
この歴史的な出来事の背後には、悲劇がありました。
当時イランに滞在していたほとんどすべての専門家や創造的な人々が駆り集められ、すみやかに取調べを行い裁判にかけ「処理」するために投獄されたのです。
- 初日か2日目に銃殺される者もいました。
- 革命政府による裁判は、人物を特定し、罪状を読みあげ、そして刑が宣告されるだけのものでした。
- 裁判は 10 分以上続くことはありません。
- 「処理」されるまでに、時間の猶予が与えられた者もいました。
- 博士は幸運にも後者のグループの1人になりました。
- 刑務所の権力者たちにとって、博士の医師としての手腕が有用であったからではないかと思います。
- そのために「処理」が遅くなったのでした。
刑務所という名の「ストレス研究所」での大発見
「処理」を免れた博士でしたが、過酷なストレス環境の中で生きることを余儀なくされました。
「私が2年と7カ月を過ごしたテヘランのエヴィン刑務所は、600人の囚人を収容するように設計されていました。
ところが一時は、8,000人から9,000人の囚人が、まるで缶詰のイワシのように寿司詰め状態になって押し込まれたのです。
革命の熱気が最高潮に達した頃に、権力者たちは6人から8人を収容するためにつくられた刑務所の監房に、90 人もの囚人を詰め込んだのでした。
3分の1は横たわり、3分の1はしゃがみ、そして残りの3分の1は立っていなければなりませんでした。
数時間ごとに囚人たちは位置を交代しました。この極限的に過酷な生活によるプレッシャーは、年齢分布が14 歳から80 歳にまでわたっていた囚人のほとんどに、たくさんのストレスと病気を引き起こしました。」
博士はこのストレス地獄の中で、ある大発見をします。
- 「午後 11 時を過ぎていました。私は囚人仲間がひどい胃痛に悩まされているのに気づきました。彼は自分自身では歩くこともできませんでした。2人の仲間が彼を立たせるために手伝っていました。彼は胃潰瘍に悩まされており、薬を欲しがっていました。私が、刑務所には薬をもってくることが許されなかったんだと伝えると、彼はひどくうなだれました。その時、大発見をすることができたのです。
- 私は彼にコップ2杯の水を飲ませました。彼の痛みは数分で消失し、自分自身で立ちあがることができるようになりました。彼は満面に微笑みをたたえました。これほどに過酷な環境のなかで、彼が経験した安心感からくる喜びがいかほどのものであったか、想像することは難しいでしょう。「もし痛みが戻ってきたらどうしたらいいんですか?」と彼はたずねました。「3時間ごとに、コップ2杯の水を飲みなさい」と私は答えました。
- 刑務所での残りの生活において、彼はまったく痛みを感じることなく、また病気にもかかりませんでした。このようなひどい環境において、水が病気を治療したということは、医師の私にとって驚くべきことでした。私は、水がもっている癒しの力をまざまざと見せつけられたのでした。それは医学校では決して教わることのなかったことでした。
医学の研究においては、このような観察は一度もされていないのではないかと私は感じました。
あまりの痛さに文字通り死にかけていた患者を治療することもできました。
- 「その時もまた夜の 11 時過ぎのことでした。私は患者であるひとりの囚人のもとに出かけようとしていました。突然、廊下の突き当たりの独房から、静寂を破るうめき声が聞こえてきたのです。その声のもとに行ってみると、ひとりの若者が独房の床の上で、身体を丸めて横たわっていました。
- 彼は誰はばかることなく、静けさのなかで腹の底から響き渡るようなうめき声をあげていたのです。「どうしましたか?」とたずねましたが、まったく反応がありません。どうにか返答することができるようになるまで、私は彼の身体を揺すってあげなければなりませんでした。
- 彼は「潰瘍ができていて、死ぬ思いなんだ」と答えました。「痛みを和らげるために何かしたかい?」と私はたずねました。彼はもたつきながらも、こう説明しました。
「午前1時から…痛みがはじまった……タガメッツを3錠飲んだ……そして制酸剤を1瓶……でもそれから痛みは一層ひどくなった……」(この時には囚人たちは刑務所の病院で薬をもらうことができました)。 - この時までに私は、胃潰瘍については、以前と比べるとはるかに明確に理解していました。ですが当時まだ気がついていなかったことは、胃潰瘍の痛みの激烈さでした。それは強力な薬剤によっても止めることができないほどのものです。合併症がないかどうか腹部を診察した後、コップ2杯程の水道水を処方しました。私は彼のもとを離れて、もう1人の囚人の患者のもとに向かいました。
10 分後に彼のもとに戻った時には、痛みによるうめき声はもう廊下に響き渡ってはいませんでした。
「どんな感じだい?」と私はたずねました。
- 「ずっと良い感じだよ、でもまだちょっと痛みが残っている」と彼は答えました。
- 3杯目の水を与えると、4分以内に痛みは完全に止まったのでした。
- この男性は死に瀕していて、意識がもうろうとしていたのです。
- 胃潰瘍薬を大量に摂取したのですが、効果がまったくありませんでした。
- ところが今は、コップ3杯の水道水を飲んだだけで痛みがまったくなくなって、きちんと椅子に座ることができ、友人たちと楽しく話をしているのです。
なんとすばらしい発見でしょうか。私はロンドンで、世界で最高の医学の教育を受けていたと考えていたのに・・・。
水が薬になる
私が囚われの身となった3年近くの間、テヘランのエヴィン刑務所(神が私に与えてくれたストレス研究所)で、ただの水だけを使って、3,000例以上の胃潰瘍を治療しました。
すべては水のおかげです。
- 水は、誰にとっても効果があり、ありふれていて簡単で、そしてまったく経費のかからない薬です。
- 私たちの誰もがごく当たり前のものと思ってしまっている水……。
- 医学の専門家たちからは、研究に値しないとして片づけられてしまっていた水です。
- とても単純にみえますが、真実は「水不足によって病気が引き起こされる」ということなのです。
- 誰でも水は身体に良いということを知っています。
ですが、人の健康にとって水は実際にどれほど本質的なものなのか、そしてまた毎日必要とされる量の水を摂取しなかった場合に、一体身体の中でどんなことが起こるのか、といったことを十分に理解している人はほとんどいません。
水不足によって引き起こされる、病気を予防したり治療したりするための解決策は、定期的に水を摂取することです。
- 成人になった初期の段階から、渇きの感覚が少しずつ失われていきます。
- そのために私たちの身体は、慢性的かつ継続的な脱水状態になるのです。
- 年齢を重ねるごとに身体の細胞の水含量は減少していき、細胞の内側にある水の体積と細胞の外側の水の体積の比率が 1.1 からほとんど 0.8 にまでに減少してしまいます。
- これはきわめて劇的な変化です。
私たちが飲む水は、細胞機能を支えたり、細胞の中で一定の体積を占めることによって構造を維持したりするので、私たちの日々の水の摂取量は細胞活性の効率に影響を与えます。
脱水症状を知らせるさまざまな緊急信号について私たちがよく理解していなければ、こうした慢性的脱水症状があたかも何らかの病気に由来するものであると、私たちは誤って判断してしまうことになるのです。
そのうえ、身体が訴えている渇きの信号は、異常なものと認識され、薬剤を使って処理されてしまうのです。
- 人の身体は、水を容易に得ることができる環境にあっても、脱水症状に陥ってしまうことがあります。
人は渇きの感覚や水の必要性を正しく認識する能力を失ってしまっているようなのです。 - 人は年齢を重ねるにつれて、水の必要性に気づくことなく、徐々にそして確実に、身体の中で脱水症状が進行していくのです。
ノドが渇いた時には、お茶やコーヒーやアルコール飲料を飲むことで渇きを癒すことができる、とする考え方も、混乱を大きくしています。
これは極めてありふれた考え方ですが、大きな間違いなのです。 - 唇の渇きは、脱水過程で最後に表れる症状なのです。
幼児の場合には、唇が十分湿っていても脱水症状に苦しむことがあります。
もっと悪いことに老人においては、唇が明らかに乾燥しているように見えても、水を欲しているということが認識されず、それゆえにその欲求が満たされることがない、ということです。 - 身体が水不足に陥った時には、水を摂取するための経路が確保されますが、それに加えて、身体の中で利用可能な水を再分配するシステムが、あらかじめ定められた優先順位プログラムに従って稼働します。
それは、水危機を管理するメカニズムの1つなのです。
その際に、ヒスタミンによって指示され作動する神経伝達物質系が活性化され、水摂取を促進する下位のシステムが活動を開始するということが、今や科学的に明らかにされています。
- これらの下位のシステムは、循環している水を分配したり、あるいはほかの部位から採取可能な水を再分配したりもします
- 。身体の中には水の貯蔵タンクは存在していないので、身体の中で利用されている水や、すでに取り込まれて身体内に供給されている水を、優先順位に従って再分配するシステムが働き始めるのです。
- 脱水症状に陥った動物の身体の中では、水不足管理システムが働いて、神経伝達物質であるヒスタミンの生産速度と貯蔵量が増加します。
- ヒスタミンとその下位に位置する水摂取と水分配を制御する因子であるプロスタグランジン類、キニン類、そして PAF(もうひとつのヒスタミンと関連した因子)は、身体の中で痛みを知覚する神経に触れると、痛みを引き起こします。
医学において、このような新しい見方を採用することによって、今まで無視されてきた2つのポイントが明らかになってきます。
1つ目は、身体の老化につれて、水はどんどん失われていくものであり、渇いた唇が身体の渇きを示す唯一の指標ではない、ということです。
2つ目は、神経伝達物質であるヒスタミンの生産とその下位にある水代謝に関連した制御因子が過剰に活性化された時には、これらの物質は身体のさまざまな部位でアレルギーや喘息、慢性的な痛みを引き起こしますが、これらの痛みは渇きを示す信号として捉えるべきである、ということです。
すなわち、これらの痛みは、身体の中の水不足を訴えている危険信号のひとつと見なすべきなのです。
このパラダイム・シフトによって、全身的もしくは局所的な身体の水不足症状を示すさまざまな信号を正しく認識することが初めて可能になります。
身体の慢性的な痛みは、それが外傷や感染などによって簡単に説明がつかないものならば、痛みが発生している部位における慢性的な水不足を訴える信号―局所的な渇き―なのではないかとまず疑ってみるべきなのです。
感染性ではないにも関わらず再発するような痛み、あるいは慢性的な痛みは身体内の水不足によってもたらされたのではないかとまず考えてみるべきです。
- これらの慢性の痛みには、胸やけ、リューマチ性関節炎の痛み、
- 狭心痛(歩行や休息時に起こる心臓の痛み)、腰痛、間欠性歩行障害における痛み(歩行の際の足の痛み)、
- 偏頭痛、二日酔いの頭痛、大腸炎の痛みとそれに関連した便秘などが含まれます。
見方を変えることによって、これらすべての痛みは、毎日の水摂取量を定期的に調整することによって治療することができるのです。
- 鎮痛剤や、そのほかの抗ヒスタミン剤、制酸剤などの 痛みを取り除く薬剤を定期的に服用することを決める前に、必ず数日間にわたって、24 時間当たり 2.5 リットル以上の水を飲んでみるべきなのです。
- ただし、もし問題が何年にもわたって存続しているような場合には、腎臓が十分な量の尿をつくり出すことができて身体の中に過剰の水を蓄積することがない、ということを確認してからにすべきです。
- 尿の排出量は水の摂取量に対して計ります。
- 水の摂取量が増えれば、尿の量も同様に増加していかなければなければなりません。
脊椎関節、すなわち椎間の関節と椎間板構造の働きは、椎間板の中核部や脊椎骨の平らな表面を覆っている末端軟骨組織に貯蔵されている水のさまざまな水力学的な特性に依存していることをよく理解しておくことが必要です。
脊椎関節においては、水は互いに接触しあう表面で潤滑油の働きをしているのみならず、椎間にある椎間板の中核部にも保持されていて身体の上半身の圧縮重量を支えています。
ゆうに 75%を越える身体の上半身の重量がこの椎間板の核に貯蔵されている水によって保持されており残りの25%は椎間板の周りにある繊維質によって支えられています。
- これらの関節のほとんどにおいて、時折形成される真空状態が関節に向かう静かな水の流れをつくり出します。
- そして関節の活動によって生み出される圧力によって、水は外へと搾り出されることになります。
- 腰痛を防ぐには、十分な量の水を飲んだうえで、水を椎間板の空間に引き入れるのに必要とされる、時折の真空状態をつくり出すための一連の特別な運動を行う必要があります。
- これらの運動は、背筋の痙攣をも和らげます。
- この背筋の痙攣が、じつは多くの人々にとって、腰痛の主要因になっているのです。
- 正しい姿勢をとることも必要です。簡潔に言えば、背骨の関節に水が十分量しみ込んでいないと腰痛になる、ということです。
- そして腰痛を解消するためには、水をたくさん飲むことと、背骨の関節の中まで水をしみ込ませるために特別な運動をするのがよいということです。
このように私たちが普段思っている以上に、水(水不足)はさまざまな症状の根本原因となっているのです。そしてまた普段から水をたくさん飲むことによって、たくさんの病気の発症をあらかじめ予防することができるのです。
参考資料 バトマンゲリジ博士
バトマンゲリジ博士 著書『あなたの身体は水を渇望している』
(F. Batmanghelidj, M.D.)のホームページ